ESGはSDGsと並んで、企業の存続に欠かすことのできないキーワードだ。
2006年の調査結果によると、ミレニアル世代(1981年以降に生まれ、2000年以降に成人を迎えた世代)は、企業が社会的・環境的に責任を持とうとしているという評判を有していると、企業を信頼したり、その企業の製品を購入したりする可能性が高くなるという。
消費者の購買行動にも影響を及ぼすESG、ESG投資、そして環境問題・社会問題・ガバナンス問題に取り組む世界のスタートアップ企業を紹介する。
ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス、統治プロセスのこと)の頭文字をとったものだ。
環境問題関連のトピックを強く思い起こさせ、それはEを構成する頭文字であり重要な要素であることは確かだが、環境要素以外も意味する。
企業の労働慣行・人材管理・製品の安全性・データのセキュリティなどの社会要素、そして取締役会の多様性・役員報酬・企業倫理などのガバナンス要素だ。
モトリーフールによると、NIKEは環境基準に則った企業であるとしている。再興持続可能性責任者を据え、FlyknitおよびFlyleather製品は、環境の持続可能性を念頭に置き開発されている。しかし2020年12月現在、ワシントンポストやブルームバーグが新疆ウイグル自治区に関連して製品の生産に際し人権侵害が行われている可能性について報じており、ナイキジャパンにおける民族差別に関連するプロモーションなどと比較され、SNSでは倫理や道徳に関連する民意も挙がっている。
社会的に正しいアクションを行う企業を見極めるためには、フォーチュンやフォーブスの従業員による企業ランキングや、企業レビューサイトによる調査分析が参考になる。モトリーフールはアクセンチュアのアプローチや、フォーチュンの最も働きがいのある会社リストに11年間掲載され続けていることを称賛している。
2020年12月現在、日本のある化粧品・健康食品関連企業の会長がヘイトスピーチを行なったとして注目を浴びている。このような行為が社会的に問題があるとされる行為の例であろう。
コーポレートガバナンスについてはまず、不祥事の例を挙げる。2011年のオリンパス株式会社の不正会計処理に伴うアメリカ人CEOの解任問題、2015年の株式会社東芝の不正会計問題、2017年に経営破綻をしたタカタ株式会社のエアバック関連問題、2017年の神戸製鋼所によるデータ改竄問題、これらは全てコーポレートガバナンスが守られていないことによる不祥事だ。
アメリカのビジネス/金融ソフトウェア企業Intuitの取締役会の多様性は40%を占め、株式のシェア・所有ガイドラインは強力であり、経営幹部のインセンティブ報酬は業績を構成する細かな項目に結びつけた上での説明責任を示す。Best Employers for Diversity 2020では48位に、India’s 100 Best Workplaces for Women 2020のトップ10にランクイン。さらにHRC財団はIntuitをBest Places to Work for LGBT Equalityの一つに指名した。これらはアメリカの中でもトップレベルの水準である。
ESG投資とは、ESGに関する情報を考慮した投資のことだ。中長期的な目線で戦略的に再生エネルギー関連に投資を行う動きが見られる。
ESG投資は2006年、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)と国連グローバル・コンパクト(UNGC)のパートナーシップにより投資コンセプトが示された。それが投資家イニシアチブである「投資責任原則(PRI)」だ。主要な機関投資家は投資プロセスにESG要因を取り入れており、2017年4月時点で68兆アメリカドルを超える資産運用に相当する1800を超える署名者が指示している。
日本では第二次安倍内閣による日本再興戦略のなかで、2014年に日本版スチュワードシップコードが、2015年にはコーポレートガバナンスコードがそれぞれ策定された。
各原則の適用の仕方や工夫は機関投資家と企業の工夫に任されており、コードの中には「投資先企業のガバナンス」「社会・環境問題に関連するリスク」も含まれる。
SRIとは、社会的責任投資のことで、Socially Responsible Investmentの頭文字から成立する。社会的・倫理的な側面を考慮して投資対象を選び、社会に対して無責任なビジネスを支援しないための投資を示す。
アメリカで1970年代に始まり、銃・タバコ・ギャンブル・アダルトエンターテイメントのほか、道徳的に悪とみなされる(悪徳)投資を除外するためのネガティブスクリーニングな手法である。
ESGは、SRIと比較すると「ネガティブなものをスクリーニングする」ではなく、「環境・社会・ガバナンスなど実施することでポジティブな影響を与えるアクションを積極的に採用している」という見方であると言えるだろう。実際、「高品質の環境・社会・ガバナンスの基準に従う企業は、長期的に同業他社をしのぐ可能性が高くなる」という解釈もされている。
日本では2018年に環境省がESG金融懇親会を設置した。ここでは、金融市場の主要な面々が国民の資金を気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決、および新たな成長へとつなげるために議論が行われた。パリ協定、脱炭素社会、持続可能な社会に向けた戦略なシフトを求めるなかで、ESGを考慮することは避けられないと言える。
結論として出されたものは以下だ。
・ESG投資をさらに社会的インパクトの大きいものへ育む
・グローバルな潮流を踏まえ、ESG融資を実現する必要がある
抜粋してまとめるとこの2項目であり、これを「国も必要な施策を講ずる」として提言された。
ESGに関与するべき人材は、企業活動に関わる全員と言える。
PwCアメリカは「女性の取締役は男性の取締役よりも、ESGに投資している」と明言している。女性取締役は、会社の戦略とESGの問題との間に大きなつながりがあると考えており、男性取締役の46%と比較して、女性取締役の60%が「ESG問題を企業戦略に組み込むべきである」と述べているという。
ちなみに女性取締役と男性取締役を比較すると、気候変動(79%対62%)、人権(79%対64%)、社会運動(69%対40%)の割合で、女性の取締役の方がこれらの問題を会社の戦略に組み込んでいるとしている。
つまり男性(取締役)は、女性よりも気を配ってESGの観点を持つよう心がけた方がいいだろう。
2020年現在、情報が世界中に広まる速度は光のように速い。香港の投資会社Fidelity Internationalは、そのこともESGを推進するべき要因であると分析している。
一般人がすぐに世界中のニュースにアクセスでき、どこで何が起こっているのか素早く知ることができるため、世界の透明性が高い。
これまでは企業が主導になり世論や需要を作っていたが、今や、世論が企業を監視していると言えるだろう。企業はブランド価値を維持もしくは高めるために、リスクや炎上騒動を回避する必要がある。
ここで紹介するESG関連のソリューションに取り組んでいるスタートアップ企業は、企業としてその事業に取り組んでいる。すなわち「環境・社会・ガバナンス『ではない』事業を展開している企業が環境・社会・ガバナンスを遵守するためにそれらのスタートアップ企業を知ること」は少し方向性が違うとも言えるかもしれない。
しかしスタートアップの製品や事業を自社に取り入れることもでき、参考にすることもできる。よりクリアにESGを理解して視座を上げるために、スタートアップ企業の取り組みを知ることは有益だろう。
健康的な企業文化・オフィス環境を人工知能ベースのテクノロジーを活用して促進するイスラエル発のスタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_1N5aBNmXecVQj20
社会問題や環境問題に関心がある世界中の人と企業をつなげる、新時代のSNS
https://sunryse.co/app/startups/r_kBurOkKJel5DCE7
地球環境に貢献したい投資家とESG事業を繋ぐ投資プラットフォームを提供するポルトガル発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_opvdjsjtdyaffki
ブロックチェーンによって二酸化炭素排出をオフセットしグリーンファイナンスを推進するプラットフォームを提供するスペイン発のスタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_fqtiakcwhskdslu
利用すればするほど緑が増えるエコなライドシェアを提供 カナダ発のスタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_iwbzhahunwwzrfn
モバイルバンキングを通じてグリーンファイナンスを推進!ドイツ発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_qdhyywbtwuptewe
動物実験を防ぐために人工臓器モデルを開発するイギリス発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_yiqeckegfxubyre
バーチャルフェンスで家畜をリモート管理できるシステムを展開するアメリカのスタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_kyysfhrblhfqzfk
最大35%の消費エネルギー抑制を実現!独自のリアルタイムアルゴリズムによりビルのHVACシステムを制御するシンガポール発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_sadzpdwlsitcvbv
規模を問わず再生可能エネルギーの設置から保全まで全てをサポートするイギリスの企業
https://sunryse.co/app/startups/r_qmwfhcokvoneqms
船舶の燃料消費に関するパフォーマンスをリアルタイムで測定して最適化するEU発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_rmqtmbfjwrkttqr
テクノロジーの力で再生可能エネルギーのシェアリングを実現したスロバキア発スタートアップ
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重工業業界にIoTデータプラットフォームを提供するノルウェー発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_fvwhlecncnhauir
モバイルバンキングを通じてグリーンファイナンスを推進!ドイツ発スタートアップ
https://sunryse.co/app/startups/r_qdhyywbtwuptewe
参照:
https://www.fidelity.com.hk/en/
https://www.pwc.com/us/en.html
「SDGsの基礎」株式会社宣伝会議
https://www.esg.adec-innovations.com/
https://www.smbcnikko.co.jp/index.html
https://www.msci.com/
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-11/Q70AX3T1UM1101
https://www.bbc.com/japanese
https://www.intuit.com/