2022年に開催されたSlush 100の優勝者である「Immigram」は、後日ロシアとの関係でソーシャルメディアにて批判を浴び、優勝の取り消しが発表された。本記事では、優勝直後に実施した創業者Anastasia Mirolyubova氏との独占インタビューをお届けする。
写真:Slush100 ファイナルの様子(SUNRYSE)
フィンランド発スタートアップイベント「Slush 2022」は、Day2にピッチコンテストSlush100のファイナルを開催した。
このピッチコンテストは2019年以降に設立されたスタートアップを対象としており、過去の自己資金が50万ユーロ未満のスタートアップであれば国や地域を問わず参加することができる。優勝スタートアップは、「Meta」や「Stripe」、「Airbnb」といった様々なスタートアップを送り出してきた「Accel」、「General Catalyst」、「Lightspeed Venture Partners」、「Nea」、「Northzone」などを含む優れたアーリーステージVCから1,000,000ユーロに及ぶ投資を受けられるだけでなく、各パートナーから1対1のメンタリングを受けられる。Slushによると、今年は1000社以上の申し込みがあったそうだ。
優勝を勝ち取ったのは移民の課題を解決するスタートアップ 「Immigram」であった。「Immigram」は、才能あるIT技術者や起業家の移民をターゲットに、Global Talent Visaの取得など移住に伴う複雑な手続きの合理化・自動化を可能にするエンドツーエンドのプラットフォームを提供するスタートアップである。
手続きのプロセスとして、初めに申請者は自分自身がグローバルタレントビザに適した人材か評価を受けるためにスコアリングテストを受ける。その後最適な転職ルートを特定し、応募を成功させるためのまとまったケースマップを作成する。具体的には申請者の職歴を元に自己紹介文と推薦状、移住申請の証拠書類の作成、Tech Nationと内務省のポリシーに関するアドバイスの提供等を行う。必要書類の提出を行った後、仮に書類審査に落ちたとしても前回の申請書を分析し、詳細な不服申し立て理由を作成するサービスも提供している(参照)。
写真:Slush 100ファイナルに登壇したスタートアップと審査員(Photo by Slush 2022, Petri Anttila)
有難うございます。こうなるとは夢にも思っていなかったです。そもそもSlushのことを知ったときには既にチケットが完売しており、どうやってイベントに参加するできるのか分からずいました。Slushに参加する唯一の選択肢がSlush 100 のピッチコンテストに応募することだったんです。Slush100の応募について知ったのは締め切り直前だったので、チームメンバーが寝ている間に一晩中かけて応募資料を作成し応募しました。偶然が重なり、書類審査が通りトップ100社に選ばれ、ピッチ資料提出後、トップ20に選ばれました。Slush初日に開催されたセミファイナリストのピッチコンテストでもトップ3社のファイナリストとして残ることができ、このニュースを聞いたときにはチームに泣きながら電話しました。全ての出来事が一瞬でした。
というのも実は私たちは資金調達に苦戦しており、苦労していました。今回5人のクールなメンバーが投資家として参画してくださったことが非常に嬉しいです。
本当に嬉しかったし、本当に驚きました。というのも、これは大きな価値のあるコンテストであることをよく理解しているからです。優勝企業が実際に1,000,000ユーロに及ぶ投資を受けられるというのはSlushのイベントでも初めてだということが分かっていたからです。
私のチームが団結して取り組んできた事業なので、それが認められたことが何よりも嬉しかったです。「Immigram」が選ばれた後、私はすぐに共同創業者に電話をして結果を報告しました。
このスタートアップは私の人生であり、私の全てなのです。信じられないほど幸せだと思います。
写真:Slush 100ファイナル結果発表の様子(Photo by Slush 2022, Petri Anttila)
明日ロンドンに戻り、火曜日にはサンフランシスコに行きます。アメリカ市場でローンチできるよう早速準備を進めていきます。今後も多くのマーケットでImmigramが展開できるように成長させたいと思っています。今後5年間で、世界の移民のエコシステムを構築することを目指します。多くの移民を支援していく体制を整えていきたいと思います。
上記のインタビューは11月18日、Slush Day2のSlush100で優勝が発表された直後に実施されたものである。
優勝が発表された翌日11月19日、移民のためのプラットフォームを運用する「Immigram」は、ロシアとの関係でソーシャルメディアにて批判を浴びることになった。ウクライナのテックメディア「AIN.Capital」は、ロシアのテック技術者を採用し出国を支援している「Immigram」が優勝として選出されたことを、物議を醸す決断であると述べている(AIN.Capitalの記事)。
Slushの主催者は本件に関する見解をTwitterで表明し、「ロシアの企業やファンドと提携、また、ロシアに拠点を置く企業からのスタートアップや投資家の申請を受け付けない」とし、優勝企業の経歴を「徹底的に調査する」と述べている。また、Slush翌週の11月21日月曜日には、Slushの公式Twitter上で同社の優勝取り消しを発表している(参照)。
この度、SUNRYSEチームがSlush 2022の報告会イベントを開催致します。SUNRYSR MAGだけではご紹介しきれない個別のスタートアップ事例やインタビューの様子、会場内の設置ブースや白熱したピッチバトルなど現地でしか得られないリアルな雰囲気をご紹介いたします。奮ってご参加ください。
場所:オンライン開催(ZOOM)
日時:2022年12月20日(火)19:00~20:00
費用:無料
※本イベントは終了しております。スタートアップ紹介のソリューションをご希望の方は、こちらへお気軽にお問い合わせください。
表題画像:Photo by SUNRYSE
執筆:松崎 真理
編集:藤澤 みのり
表題画像作成:小川 菜生子