City-Tech.Tokyo 2023 日本最大級のスタートアップイベント Day1レポート

持続可能な都市の実現に向けた挑戦とイノベーションの始まり。日本最大級のスタートアップイベントCity-Tech.Tokyo Day1イベントレポート。
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2023年2月27日・28日に、東京国際フォーラムで東京初となる日本最大級のグローバルなスタートアップイベント、City-Tech.Tokyo 2023が開催された。SUNRYSEは本イベントの公式アンバサダーを務め、現地での取材を行った。本レポートでは、City-Tech.Tokyoの概要に加え、当日のセッションやピッチコンテスト「City-Tech Challenge」のセミファイナルステージの結果をお伝えする。

City-Tech.Tokyo 2023とは

写真:SUNRYSE

スタートアップとのオープンイノベーションを通じて、持続可能な都市を実現するためのシティテックイベントである。30カ国100都市から10000人以上の参加者を動員し、展示スタートアップ数は300以上、参加VC数は100を超える。都市課題を乗り越え、新たな都市像を創り出すための多彩なアイデアやテクノロジーについて、国内外からの参加者により、セミナー、展示、商談会などが展開される。

City-Tech.Tokyo 2023では「社会基盤(Infrastructure)」「環境(Environment)」「生活(Living)」「文化(Culture)」の4つのメインテーマに沿ってプログラムが進行された(参考)。

会場の様子

会場では世界中からの参加者が集い、活気に溢れた空気が流れていた。

木々の緑を利用した装飾やカラフルなライトは味気ないホールを活気あふれる空間へと生まれ変わらせていた。オープニングセッションも行われたステージではスモークや多彩な光、アップテンポの音楽と共にセッションを盛り上げるなど通常の講演会とは一線を画すような演出だ。

写真:SUNRYSE

会場内には日本各地から出展するスタートアップに加え、フィンランドやスイス、イスラエル、韓国、台湾など世界中のスタートアップがブースを出展した。参加者からはブースの訪問や、テーマ別のセミナー・展示会、ワークショップへの参加を通じて、都市課題や新たな都市像の創出に向けた取り組みへの理解を深める様子が読み取れた。

写真:SUNRYSE

スタートアップ、企業、投資家、大学、メディアなど、様々なバックグラウンドを持つ人が関わり合い話し合うことで、いくつもの新たなイノベーションのきっかけが生まれていた。

オープニング

写真:SUNRYSE

イベントは東京都知事である小池百合子氏によるスピーチで幕を開けた。小池都知事は自身のカイロ留学や環境大臣時代におけるクールビズの提唱などに触れ、初の女性都知事として挑戦し続ける意思を示した。そして、巨大都市東京としての強み、そして東京におけるスタートアップ戦略をアピールした。

東京都では2022年11月にスタートアップ戦略「Global Innovation with STARTUPS」を策定し、「Born Global」をキーワードに今後5年のうちに東京発のユニコーン数、東京における起業数、そしてスタートアップとの協働実践数の3つのカテゴリにおける数値を10倍に膨らませるとの目標を発表した。これに伴い今年度は、昨年の1.5倍にあたる約2億ドルの予算を用意し、今後5年のうちに10億ドルの規模へと拡大する見通しだそうだ。その上で、アジアのスタートアップゲートウェイとなる大規模拠点「Tokyo Innovation Base」の用意など、国内外問わずスタートアップやベンチャーキャピタル、アクセラレーター、研究機関や大学など幅広いセクターを巻き込みながらスタートアップのグローバル振興を目指す姿勢を強調した。

世界共通の都市課題を克服するためのアイデア・テクノロジーを東京から世界に発信し、世界で親しまれる寿司のように、国際社会で存在感を高めていく。その思いをまとめた「SusHi Tech Tokyo(Sustainable High City Tech Tokyo)」というコンセプトの下、東京は2023年を新たな出発点とするとして、2023年には第一弾として本イベントCity-Tech.Tokyoと世界の都市リーダーによる国際会議「G-NETS Leaders Summit」を開催するとした。

小池都知事はこれらのイベントを東京で開催する理由として、東京・日本の新たな成長、持続可能な未来の実現、世界の都市課題の解決の3点を挙げた上で、City-Tech.Tokyoは世界の第一線で活躍する著名人による講演・セッション、最先端の技術を披露するピッチコンテスト、国内外41カ国からの328のスタートアップ、世界36都市と東京の主要大学が出展するブースを通してオープンイノベーションの巻き起こる場になると紹介した。

最後に小池都知事は「持続可能な都市の実現に向けた挑戦・イノベーションの幕開けです。ともに未来を掴みましょう」と締めくくり、City-Tech.Tokyo開催を祝った。

注目のセッション

持続可能な社会に向け、City-Techによるイノベーションで都市はどう変化するのか。世界的著名人らが展望を語った。本速報記事では小池都知事のオープニングセッションに続いて行われたUlrike Schaede氏によるセッションについてサマリーを掲載する。

Ulrike Schaede氏「ビジネス再改革のためのオープンイノベーション- 社内起業家精神とマネジメント変革 -」

写真:SUNRYSE

このセッションでは日本企業論を専門とし、名だたる大学や行政機関にて研究員や客員教授を歴任してきたUlrike Schaede氏が登壇し、資金力があり人材も豊富であるがスピード感に欠けリスクを取らない大企業と、資金力や人材は不十分であるがエネルギーに溢れスピード感あるスタートアップの強みを掛け合わせる可能性と、日本企業がスタートアップをイノベーションへと巻き込む必要性について説いた。

同氏はB2Cにおいて日本は中国や台湾、韓国に追い抜かれつつあり、またESG投資など世界的流れの変化が生まれている国外の状況と、人手不足や高齢化社会となる日本国内の状況を踏まえ、大企業は変革を迫られていると指摘した。

そして中国を中心に企業が巨大化していく中、日本は真っ向から立ち向かうのではなく「技」を駆使する必要があるとしたのだ。同氏は相撲を例に取り、体格の良い小錦や曙が主流となっていた中、比較的小柄な舞の海が「技のデパート」と呼ばれるほど多数の技を身につけ、繰り出すことで立ち向かっていたことに触れ、日本企業は「技のデパート」となるべきだと指摘した。

同氏はそのほかにも日本のイノベーションエコシステムにおける偏見や課題を手に取り、その中で指摘される誤りや必要とされる変化を紹介しつつ、日本企業の歩むべき道を示した。

ピッチコンテストCity-Tech Challenge

優勝賞金1000万円を賭けたピッチバトルCity-Tech Challenge。DAY1ではセミファイナルステージが執り行われ、DAY2のファイナルに向けて20社から7社が選出された。

見事ファイナルステージに選出されたのは、「Synspective Inc.」、「BlueSpace.ai Inc.」、「Tractable Ltd.」、「Turing Chain Ltd.」、「Alterpacks Pte. Ltd」、「Alchemy Foodtech Pte. Ltd」、「京都フュージョニアリング株式会社」の7社だ。

写真:SUNRYSE

選考の理由について審査員たちは、長期的なビジョンを掲げてコストとリターンが見合っている点や、ソフトウェアエンジニアリングの力によって大きなインパクトをもたらし市場のゲームチェンジャーとなる期待を感じられた点などを挙げ、労いの言葉を送った。

以下、ファイナル進出企業を紹介する。

  • Synspective Inc.(日本)」 小型のSAR(合成開口レーダー)衛星群を開発運用。全天候対応の地表変化モニタリングによるデータ分析ソリューション。

  • BlueSpace.ai Inc.(アメリカ)」 レベル5の自動運転実現へ。物体の知覚とその動きの予測について直線速度と回転速度のみに注目する新たなアプローチを提唱。

  • Tractable Ltd.(イギリス)」 事故や災害での車・家の損傷を自動査定する機械学習ソリューションを提供。

  • Turing Chain Ltd.(台湾)」 ブロックチェーン上のデジタル証明書の発行、管理、認証のサービスを提供することで、ペーパーレス、脱炭素を実現。

  • Alterpacks Pte. Ltd(シンガポール)」 ビールの搾りかすなどの廃棄食品から堆肥可能な食品用容器を製造。

  • Alchemy Foodtech Pte. Ltd(シンガポール)」 炭水化物と混ぜて食べるだけで、糖尿病のリスクを下げるパウダーを開発。

  • 京都フュージョニアリング株式会社(日本)」 核融合発電による究極のクリーンエネルギーを開発。

まとめ

東京都のスタートアップ戦略における新たな出発点として行われたCity-Tech.TokyoのDay1は世界中からの参加者が訪れ大盛況となった。SUNRYSEでは2月28日に行われるDay2についても速報記事にて特集予定である。

Tech.Tokyo 2023 Day2 イベントレポートはこちら


表題画像:Photo by SUNRYSE

執筆:井田新、長島光

編集:藤澤みのり

表題画像作成:鬼頭清香、小川菜生子

執筆者
井田 新 / Arata Ida
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