ブランドがマイクロインフルエンサーを求める理由と、このトレンドの行方

デジタルマーケティングが今後も継続する中で、インフルエンサーマーケティングと消費者の認識がどのように変化していくのか注目である。
エンタメ マーケティング コミュニケーション EC Social Network

ソーシャルメディアプラットフォームの人気はここ10年間で急上昇しており、我々の日常における存在感も高まっている。

この存在感の高まりには、今日のトレンドセッター(流行を先取りする人)やテイストメーカー(流行の仕掛け人)としてのインフルエンサーの台頭が含まれる。

インフルエンサーとは一般の人々であり、自分の熱い思いや日常生活について好んでソーシャルメディア上で共有する人々だ。料理やファッション、コメディからゲームまで、トピックの可能性は無限大である。

インフルエンサーは、KOL(Key Opinion Leader)とも呼ばれ、特定の分野においてブログや写真、ビデオ、ツイートなどを通して自らのファンに影響を及ぼす専門家として捉えられている。

インフルエンサーのプロモーションコンテンツを見せられることでTwitterの利用者における購買意欲は5.2倍になったと報告されている他、49%の人が、購入を決定する際にインフルエンサーからのおすすめを参考にすると答えている。

一年を超えるロックダウンを経て、実店舗での購入が制限されることで、パンデミックはインフルエンサーが購買行動に及ぼす影響を強めた。

インフルエンサーの力は、中国のソーシャルメディアでインフルエンサーを務め「King of Lipstick」としても知られるAustin Lee氏の成功から読み取れる。彼は2019年の11月11日(別名:独身の日)にTaobaoでライブストリーミングを行い、1億4500万米ドル以上の売上を達成したのだ。

顧客がお気に入りのインフルエンサーからのおすすめ商品を信用しやすいため、増大するインフルエンサーマーケティングの重要性はブランドや組織からの関心を集めている。

バナーやポップアップ広告などの伝統的な手法は顧客に煩わしいと受け取られるようになり、ますます採用されなくなっているのだ。

コスト面においても、これらの伝統的な手法は印刷やスペースに多額の投資を必要とし、その費用に見合うだけのエンゲージメント効果が得られない可能性があるため、インフルエンサーマーケティングはブランドにメリットをもたらすものとなっている。

関連記事: Is influencer marketing the future of marketing?

家族経営のお店から複合企業まで、数え切れないほどのブランドが、ブランド認知度の向上や顧客のエンゲージメント向上を目的にインフルエンサーマーケティングへの支出を行ってきた。インフルエンサーマーケティングを手がけるTakumiが2020年に行ったインターネット調査では、調査対象となったマーケターのうち73%が、より多くのリソースをインフルエンサーマーケティングに割り当てていることが判明した。

ブランドがインフルエンサーマーケティングを活用した素晴らしい例の一つに、スウェーデンの時計ブランドDaniel Wellingtonが挙げられる。同社は大物有名人ではなく、比較的小規模なマイクロインフルエンサーにアプローチすることに注力したのだ。

同社は、無料で時計を提供するのみならず、各インフルエンサーに対してソーシャルメディア上のフォロワーに15%の割引を行う独自のプロモーションコードを提供した。これにより、KOLのもたらしたエンゲージメント率と効果的な売上を把握することが可能になったのだ。

ブランドとインフルエンサー両方のプロセスを簡素化するために、インフルエンサーマーケティングに特化したプラットフォームや代理店がこの分野に殺到している。また、COVID19により、人々がオンラインに費やす時間がこれまでよりも大幅に増えることで、これらの傾向は加速している。

インフルエンサーマーケティングは業界として成熟しつつある。最近発表された数字によると、その市場規模は2019年から2021年の間に2倍以上に拡大し、この3年間だけで65億米ドルから138億米ドルに増加しているという。

インフルエンサーは、確実に、自らの築いたフォロワーを通じてソーシャルメディア上でブランドと消費者をつなぎ、引き込む、重要な仲介者となっているのだ。

さまざまなタイプのインフルエンサーが活躍しており、美容、旅行、ゲームなど、ありとあらゆるカテゴリーのKOLが存在している。一方で、信頼性が商品となった今、我々はこれらのインフルエンサーの信頼性をどれだけ知っているだろうか?

インフルエンサーが生み出す反響の大きなオリジナルコンテンツは、フォロワーを惹きつけ、その結果、彼らの社会的影響力を高める。最高のインフルエンサーは、自身の生活やライフスタイルに即してフォロワーを刺激し、結びつけ、引き込むコンテンツを作成するのだ。

インフルエンサーのコンテンツにおいて重要なのは、正直であることと人柄が良いこと、そして最も重要なことには、フォロワーを理解し、彼らを惹きつけるものを知ることだ。

関連記事:Ex-Grabbers’ startup Evo raises seed funding to help influencers, live-streamers optimise back-office ops

しかしながら、今日、多くのインフルエンサーの発信するコンテンツは、正直なレビューを伝えたり、好きなブランドを宣伝したりするものではなくなっている。むしろ、ROIを追求し、ブランドがターゲットとするフォロワーに伝えたいメッセージを反映したマーケティングキャンペーンで埋め尽くされているのだ。インフルエンサーが自分のプロフィールを広告ツールとして利用するようになるにつれ、人々は過度に機能を強調したり、製品を前面に押し出したりすることにうんざりするようになる。

これは、ファンが偽りのない意見を求めてインフルエンサーを信頼するという、信頼性と信用の上に成り立っていたインフルエンサーマーケティングのコンセプトを歪めるものだ。現在では、しばし、おすすめが本物なのか、それともブランドの非公開パートナーからのレビューなのかを見分けることが難しくなっている。

ソーシャルメディアにおいてインフルエンサーの活動を収益化することで「簡単に収入が得られる」という認識は、一般の個人がこの機会に乗ずることを促した。

しっかりとしたコンテンツを制作することが、基準と激しい競争に晒される職業に見える場合、多くのブランドは、ブランドへの注目を集めて大金を手にすることを目的に、名声やフォロワーに対してお金を払うことを厭わない。

ブランドは、結局、インフルエンサーマーケティングに過剰な費用をかけてしまい、期待した結果が得られないこともある。

インフルエンサーマーケティングの分析企業Instascreenerの最近のレポートによると、アメリカとカナダのブランドは2019年に合計19億米ドルを費やしており、そのうちの15億米ドルはInstagramのインフルエンサーに費やされたものだという。

興味深いのは、エンゲージメントやフォロワー数を偽装したインフルエンサーに2億5500万米ドルが費やされていると判明した点だ。また、Clarinsや Crocs、Krogerなどのブランドが、最小限の成果のために多額の費用を費やしていたことが明らかになった。

ソーシャルメディアへの投稿の透明性に関する懸念が高まる中、Instagramはブランドコンテンツ機能を導入した。これにより、インフルエンサーは企業とブランドパートナーシップを結び、スポンサーを受けたことをコンテンツにタグ付けすることができるようになる。

これは、米連邦取引委員会(FTC)がスポンサー付きコンテンツを適切に開示していないインフルエンサーやブランドを取り締まっていた中、ブランドとインフルエンサー双方に対するユーザーの信頼を維持する上で重要な意味を持っていた。

関連記事: How the influencer voice can be a powerful force for change

マーケティング担当者にとって、ブランドを高めるために適切なインフルエンサーを見つけることと同時に、正直さ、誠実さ、そして効果的なマーケティング戦略を維持するための適切なバランスを見つけることは非常に重要なことだ。

デジタルマーケティングが今後も継続する中で、インフルエンサーマーケティングと消費者の認識がどのように変化していくのか注目である。


翻訳元:https://e27.co/shopping-in-the-influencer-age-why-brands-are-seeking-micro-influencers-and-where-it-this-trend-going-20210723/

表題画像:Photo by Georgia de Lotz on Unsplash (改変して使用)

記事パートナー
アジア各国のスタートアップシーンを世界に発信するオンラインメディア
執筆者
井田 新 / Arata Ida
海外スタートアップの最新トレンドを
ニュースレターでお届け!
* 必須の項目

関連記事