(写真引用元:Mentimeter / 翻訳元の記事執筆者による写真提供。無断転載厳禁。)
スウェーデンでCOVID-19の最初の症例が報告されてからまだ数ヶ月だが、多くの人々にとっては、優に半生前のことのように感じられることだろう。ほとんどの国でそうであるように、スウェーデンの企業は従業員に在宅勤務を求めており、リモートワークは急速に新しい働き方の規範となった。
ストックホルムを拠点にインタラクティブプレゼンテーションのソフトウェアを開発している「Mentimeter」社では、在宅ビジネスが可能な体制が既に整っており、その移行はスムーズに進んでいる。
私たちのチームはオフィスにいるときと同じように、キッチンのテーブルで一生懸命働いている。
実際、私の周りのビジネスリーダーたちと話をしていると、スウェーデンの他の多くの企業でもこれがスタンダードのようで、柔軟な対応を示したチームを誇りに思いながらも、正直なところ、自分たちの経営がうまく回っているという現状に大きく驚いてはいないようだった。
スウェーデンでは長い間、伝統的に、ヒエラルキーの無いフラットな人間関係と対等な組織構造が続いている。このカルチャーはある意味で、リモートワークにとってひどく相性の悪いものだと言える。と言うのも、明確なヒエラルキーがなく、上司に報告される心配も無い中で、同僚が見ていないのに何故一生懸命働き続けられると言うのか?1日中ソファに寝そべり、Netflixを見続けるのにもってこいな環境だ。
しかし私は、このカルチャーが逆に上手く働くことを主張したいと思う。多くのスタートアップは、パンデミックによってもたらされたこの新しく不確実な状況の中で、新しい働き方のパターンを採用することで、スタッフの士気とモチベーションを維持することができるだろう。信頼、コラボレーション、そして透明性は、スウェーデンの基本的な価値観として私たち国民に深く根付いているだけでなく、私たちの働き方にも反映されている。より具体的な企業のビジョンと組み合わせることで、この3つの価値観はチーム全体のパフォーマンスを向上させることができる。特にこのような危機的な状況下では、さらに重要な価値観になると確信している。
多くの企業、特にスタートアップが大きな課題に直面し、優先順位が常に変化するような状況下にある今現在、組織を完全に覆し、全員にマッチした肩書きを与えろなどと言っているわけではない。
代わりに、スウェーデン式のチーム体制に根ざした5つのヒントを紹介したいと思う。これらは、どんなスタートアップの創業者、CEOでもすぐに導入することができ、またこの困難な時期に従業員にポジティブな影響を与えることができると確信している。
チームのシニアメンバーはどんなに忙しくても、他の従業員がすぐに声をかけられる状況を作り、何をしているのか何らかの形で可視化することが、今まで以上に重要になってくる。スウェーデンでは、CEOが閉ざされたドアのむこうで仕事をしているのを見るのは珍しいことで、その代わりに、あらゆるレベルのチームメンバー間のオープンなコミュニケーションが奨励されている。上層部内でストレスやプレッシャーが顕著になり、物理的なオフィス環境がないために日々の連絡が少なくなると、多くの人が問題に対処することをためらったり、通常であれば気軽に話せるはずの懸念事項がシニア層の「邪魔」になるのではないかと心配したりするようになる。これはビジネスに壊滅的な影響を与える可能性があるため、従業員の生の声に耳を傾け、同時に、会社の状況や業績について定期的かつ透明性の高いアップデートを行い、チームを安心させるための時間を積極的に取ることが重要となってくる。
私は、CEOには柔軟な労働時間を認めることを常に奨励している。従業員が仕事をする方法や場所を制限することなく、従業員が任された仕事を遂行できると強く信頼することが重要である。COVID-19の危機は、多くの人々の生活を一変させ、友人や家族と離れ離れになるなど、新たな心配や不安を生み、子供が学校に行けなくなるなどの変化によって、柔軟な対応の必要性がさらに高まっている。ストレスを癒すための午後のランニング、不眠症を補うための午前中の睡眠時間の延長、年配の親戚との真昼間のビデオ通話、ホームスクーリング中の数時間の教師当番など、従業員の新しい、そして急速に変化する可能性の高いニーズを考慮して労働時間を設計することを奨励すべきだ。
労働環境においても民主主義を構築し、全ての意見を確認することは、あらゆる会議のコンテクストにおいて重要だが、これはリモート環境では特に重要になってくる。マネージャーやCEOとして、チームのビデオ会議の構成を決め、主導権を握ろうとしたくなることもあるだろうが、これを行うと、対話の妨げとなり、会話が途絶えてしまう。それぞれのメンバーに会議のアジェンダを設定してもらい、自分のおしゃべりは最小限に抑え、座って話を聞くようにすべきだ。大人数のグループでのビデオ通話は、2~3人に独占されてしまう傾向があり、内向的なメンバーやシャイなメンバーには、自分の意見を伝えることが特に難しい場となってしまう。リーダーとして、共有したい意見のあるチームメンバー全員が発言し、ミュートを解除できるようにすることこそが重要な役割である。
今こそ、従業員に全幅の信頼を置くべき時だ。分散したチームでは、全員が軌道に乗っているかどうかを確認するために、メンバーに厳しいアップデートを要求したくなることがあるが、これでは既にプレッシャーがかかっている状況に加えて、不必要な負担をかけることになりかねない。プロジェクトやタスクの定期的なチェックインは重要だが、これは関係者全員の利益のために行うべきであり、監視ツールとして機能すべきではない。チームがどのような頻度で、どのような方法でアップデートしたいかを提案できるようにすべきだ。あなたが彼らを雇ったのは、あなたができないことができるからだろう。彼らの能力を信頼し、自己責任を奨励することで、献身性も育まれる。これができるかできないかが、危機的状況下でのビジネスの成否を左右するだろう。
伝統的に、スウェーデンのすべての企業では、1日に少なくとも1回は「フィーカ・ブレイク」を設けている。これは今でも多くの企業で行われている伝統だが、私たちのようなスタートアップでは、チームヨガやフーズボールのゲーム、散歩などの形でフィーカ・ブレイクを行うこともある。どんな活動であっても構わないが、一緒に休憩を取って仕事以外の何かをすることは、生産性を高めるために重要であり、チームをまとめるのにも役立つ。オフィスでの生活は毎日ほぼ同じようなもので、また社会的な交流が極端に不足している今この状況下においても、このような課外活動をあきらめるのではなく、バーチャルにそれを再現するクリエイティブな方法を見つけることがさらに重要になってくる。コーヒーブレイクで同僚とキャッチアップしたり、一緒にランチをしたり、一緒にエクササイズをしたりすることは、ビデオ通話でも簡単にできると言うことがすぐに分かるだろう。
「Mentimeter」社 CEO / Co-founder
「Mentimeter」は、プレゼンターとリスナーの間でリアルタイムのインタラクションを可能にするインタラクティブなプレゼンテーションプラットフォームを提供する企業で、Johnny Warstrom氏はCEOであり、共同設立者。これまでに160カ国、7,500万人近くの人々が同社のイノベーションの恩恵を受けてきた。同社は2014年に設立され、ストックホルムに本社を置いている。
翻訳元: WHY SWEDISH-STYLE STARTUP MANAGEMENT CAN HELP BOOST TEAM MORALE AND MOTIVATION IN COVID-19 CRISIS